特定技能 簡単に「転職されない」ために気をつけること

コロナもようやく落ち着き、さあこれからますます外国人雇用が活性化されると思った矢先のオミクロン株の不穏な動き。またまた怪しい雲行きですが、それでも経済活動は進めなければいけません。

先日の政府発表として、特定技能の在留資格の定義変更を検討段階に入ったとのことです。詳細は明らかではないですが、外国人材にとっては日本で長く働きやすい環境になる方向になりそうだとのことです。

そこで、最近まわりでよく聞く「特定技能」の早期離職について、雇用社側にとって気をつけなければいけない注意点をまとめてみました。

 

   特定技能と技能実習と高度人材との違い

ここで改めて現段階(2021.12)の特定技能、技能実習、高度人材(ここでは技人国を想定)との違いについて私見がメインになりますが、まとめてみます。特定技能の制度上の詳細(雇用企業側外国人材側)はこちらをご覧ください。

 

 (技能実習と異なる点)

  ・転職が可能

  ・毎年の就労資格の申請

  ・日本人と待遇が同じ

  ・候補者も会社を選べる中で、人選(面接)しないといけない

  ・内定を断られることもある

  ・雇用した国籍によって、支払う費用が発生する場合がある

 (高度人材と異なる点)

  ・日本で働く動機がお金寄りの人材が多い

  ・生活支援の実施&報告が義務付けられている

  ・学歴が必要ない

  ・雇用した国籍によって、支払う費用が発生する場合がある

 

異なる点と記載しておりますが、注意しなければいけないポイントのほうが正しい表現かもしれません。

結論から申し上げると、現時点では非常に中途半端でリスクの高い雇用形態になります。

これまで技能実習制度を活用してきた企業からの観点とこれまで高度人材を雇用してきた企業からの観点とは大きく捉え方が異なると考えます。この捉え方の違いは、雇用する側の企業だけではなく、紹介する側の紹介会社にもあり、その情報をもとにして就職活動をする外国人材にもあると考えます。

私の肌感覚では、外国人材本人には「転職できる」という内容が先走っており、雇用側には、知らず知らずのうちに自分たちが「転職しやすい状況」を作ってしまっている、そしてそこに関わる関連企業・団体には人材側・企業側の双方に適切なコミュニケーションができていない傾向が強く感じられます。先日も特定技能のベトナム人6人を雇用し、わずか入社1週間で全員一斉にやめたという話も聞いたりします。

特にコロナ禍では新規入国者数が少ない中、また技能実習生から特定技能へスライド組が多いため、人材側にとっては、「水を得た魚」のように「自由」を手にしたような感覚があるのかもしれません。もちろん技能実習でお世話になった会社で引き続き特定技能として働きたい意向を持つ方もたくさんいらっしゃいます。

そこで、簡単に「転職されない」ための大切な心構えが以下になります。

 

   1 特定技能の採用活動と技能実習の採用活動とは根本的に異なることを認識する。

技能実習制度を活用してきた企業は、これまで数多くの採用面接を繰り返してきたことと思います。しかし、採用活動の構造・背景が根本的に異なるため、その違いをしっかり認識することが非常に大切です。

技能実習生を面接で選定してきたように特定技能の候補者ももちろん面接で選ぶことができます。ただし大きな違いとしては特定技能の候補者も、他の会社を同時に選ぶことができるということです。必ずしも自社に来てくれるという一方通行な面接ではないということです。そしてそのタイミングが雇用検討企業のタイミングだけで進めることができないということです。 いわばお互いがお互いを選ぶことができる採用活動になります。雇用側からすると不利な状況である人手不足=売り手市場なので、足元を見られないよう注意が必要です。

 

   2 他社と差別化した自社の特徴をできるだけ打ち出す。

これは非常に難しい問題です。 

そもそも特定技能という資格は特定の業種に限って単純労働してもいいですよという資格です。 業務内容も明確に決まっており、スキルアップが見込めるなどのアピールポイントを打ち出しにくい為、待遇面でしか候補者に情報提供できないことが「転職しやすい状況」を創出してる大きな要因の一つとも考えられます。 建設業のように特定技能2号(高度人材と同等)など、自身のキャリアアップが見込める業種ならば、待遇だけではなく自社ならではのスキルアップ・技術の習得を視野に入れたアピールポイントが打ち出せますが、それ以外の業種はほぼほぼ待遇面しか打ち出せないため、候補者も自社より待遇の良い会社があればそこに目移りをしてしまうのは現状避けられないのかもしれません。

その中でできるだけ他社と差別化したストロングポイントを打ち出すことで、そのポイントに興味がある人材の中から選出するなど、少しでも待遇面だけではない会社の魅力に共感してもらう工夫が必要です。 このあたりは、冒頭で申し上げた制度自体の見直しの内容次第で、ガラッと市場自体が変わる可能性があります(例えば、雇用年数の上限が撤廃するのに伴って建設業以外の業種でも高度人材への道が開かれるのか?などです)

 

   3 採用時の人材の見極め

特定技能の人材を雇用検討する企業として必要な対策は、雇用前の本人の面接を徹底的にすることです。雇用側が事前にできることは、「人材を選ぶことができる」この一点に尽きます。

常日頃から人手不足に悩まされていると、どうしても採用基準が甘くなってしまいがちです。しかし、ただでさえ当の外国人材本人(特に技能実習経験者)にはすぐに転職できるマインドが備わってしまっている状況下なので、面接に来てくれただけで安心してはいけません。喜んではいけません。紹介会社が煽る中で面接でふるいにかける勇気とぶれてはいけない採用基準を持たなければいけません。

そして前職のやめた理由や就労期間などは、入社後の動向に影響が高い項目なので、必ずチェックが必要です。会社独自の選考基準はあるかと思いますが、こちら「特定技能」外国人材の採用のミスマッチを防ぐ秘訣もひとつの参考にいただければと思います。

 

   4 サポート会社(登録支援機関)任せにしないこと 

高度人材を雇用している企業からすれば、特定技能はなんて過保護な就労資格なんだといった声も聞こえます。どちらかと言うと私もそう感じています。技能実習制度でサポートのほぼ全てを監理会社に委ねてきた会社からすると、この感覚は薄いかもしれません。もちろん全てを監理会社に委ねずに、自社で対応できることは自社で対応してきた会社も多いかと思います。 

いずれにせよ、コミュニケーションの主体は雇用主にあります。 高度人材でも外国人材の離職のほとんどは、社内の日本人とのコミュニケーション不足がきっかけになっています。来日が伴う人材の採用時は最初のサポートしなければならない項目に関しては登録支援機関などのサポート会社に任せるのはいいと思いますが、それ以降のサポートに関しては自社で内製化するといった契約形態も視野に入れることをお勧めします。

内製化することで外国人材本人とのコミュニケーションも増え、また特定技能人材の日本語力は低いため会話の頻度を増やすことが本人のコミュニケーション能力をアップさせる近道になります。同時に携わる日本人も彼ら彼女たちの接し方をより円滑にすることができる工夫や学びなどを得る環境に置くことになるので一石二鳥どころか一石三鳥ぐらいのメリットばかりになります。

当社は登録支援機関でもありますが、特定技能雇用企業にとって必要な機関であると思う反面、最終的には雇用企業が自社で全てを対応できる様になって欲しいと考えています(実際に可能です)。つまり雇用主と従業員とのより密な関係構築がまず必須だと考えています。最初は大変だと思いますが、その苦労と想いが就職を希望する外国人材に最も伝わるタイミングでもあると考えています。 

 

   5 仕事以外の共有ごとを社内で仕組み化すること

外国人材の早期離職を引き起こす原因は、先にも申しましたが、コミュニケーション不足から起こる自社への愛着が無くなることへ繋がります。その気持ちの矛先は、そんな環境で働く自分自身を肯定させるための唯一の物差しである待遇面へと向けられます。そこだけに関心が向けられると、もう止められません。隣の芝は青く見え始めます。このようなメカニズムになってしまう会社に共通しているのは、外国人材との仕事以外の共有ごとが全くない会社です。

つまり、仕事以外の共有ごととしての「何か」を構築しなければいけません。

ここでオススメなのは、特定技能人材の日本語力を高める施作です。またそれを外国人担当者と特定技能人材だけの取り組みではなく、会社として仕組み化することに意味があります。”会社としての取り込みなんですよ”と社内全体に浸透させることで、日本人スタッフに特定技能人材をチームメイトとして意識漬けさせることに繋がり、言葉が通じにくい日本語レベルの特定技能人材にも働きやすい職場環境として伝わりやすい土台になり得るのです。このような仕組みがあることも、採用活動でのストロングポイントになるかもしれません。

 

このように雇用検討する企業さまの対策としては、

・まずは特定技能の仕組みを理解する

・自社のアピールポイントを明確にする

・採用面接をしっかり行う(特に前職を辞めた理由など)

・サポート会社に丸投げしない

・仕事以外の共有ごとをつくり、社内で仕組み化する

となります。

 

   リスクヘッジは採用前から始まっている

お読みいただいてお気づきかと思いますが、簡単に転職されないために気をつけることとは実は採用する前から始まっているのです。どれだけ入念に準備をしていても、相手は人間なので思う様にすすまないことも当然ございます。ただし、判明しているリスクをどれだけ事前に回避できる準備ができるかが重要と考えます。

現状では、特定技能の資格そのものがいかに中途半端で雇用者側にとってリスクが高いことがおわかりいただけたのではないかと思います。これはこれまでの技能実習制度を奴隷制度のような形で悪用してきた企業が引き起こした結果に過ぎないと考えています。そこに巻き込まれた外国人労働者を救済するための手段としての「転職」。こう解釈せずにはいられません。 

諸外国では、これまでの問題などを含めて、すでに日本離れが始まっているとさえ言われています。実際に待遇面だけを見ても日本は世界各国と比較しても魅力的ではなくなってきています。現在検討されている制度自体の見直しが、外国人材・雇用企業の双方にとってよりよい形になれば、また日本に魅力を感じてもらえるいい機会になるかもしれません。

 

 

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