外国人雇用の内製化

「外国人雇用の内製化」外国人雇用に携わる事業者様にとって、今後ますます取り交わされるキーワードとして「外国人雇用の内製化」が挙げられます。

「技術・人文知識・国際業務」や「介護」などの在留資格を持つ人材を雇用する企業にとっては当たり前のことですが、これから増えるであろうと想定される特定技能を雇用する企業様にとっては、避けては通れないテーマになるかと思います。

  ■大まかな雇用体制

特に今回は特定技能を雇用する企業様向けに内製化について話してみたいと思います。その前に大まかな雇用する人材の資格によって、大きく3つに分けてみました。

 

(高度人材を雇用する企業)

そもそも「技術・人文知識・国際業務」や「介護」といった学歴が必要な就労資格の人材の雇用に関しては、そこそこの日本語でのコミュニケーションができる前提が存在するため外部にサポート(生活支援)を依頼するといった概念はありません。また外国人材自身が既に日本での就労経験があったり、そもそも学歴がなければ取得できない就労資格であるため、1人で関係各所への手続きや日本での生活に支障がないレベルの方が多い傾向です。雇用する企業も日本人と同様の対応で済んでいるケースがあります。

 

(技能実習制度を活用する企業)

対して、技能実習制度は日本の技術を学び、それを母国に持ち帰って母国の発展に寄与するという「就労資格」ではなく仕事を経験するための「制度」であり、また外国人材本人の日本語でのコミュニケーション能力も低いことから、監理組合と呼ばれる外部機関・団体がサポートする役割を担います。

この監理組合は、提携国にある送り出し機関(母国で技能実習制度を活用する外国人材を養成する機関)と技能実習制度を活用したい企業との橋渡し役として、また制度を活用する企業と日本語でのコミュニケーションが難しい外国人材との間で不正(適正な雇用形態かどうかなど)やトラブルを回避するために監査役として外部のサポート機関として役割を担っています。おもにこの監理組合なしでは活用できない制度となります。

また、この技能実習生は業種・職種によっては、技能実習2号を優良に修了すれば、特定技能にスライドすることで引き続き雇用することが可能です。技能実習生の期間は先に上げた監理組合が入国時の空港への出迎えや定期的な雇用企業への巡回を通じて、技能実習生のサポート役を担いますが、特定技能にスライドすると監理組合の手から離れることになります。引き続き特定技能として働いてほしい雇用企業は、この技能実習生でいる間に、監理組合に任せっきりではない体制づくりをすることで、外国人材のサポートノウハウを学んでおくことが大切です。

 

(特定技能)

「特定技能」の就労資格に課せられた要件として、特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とするとあるのですが、就労する業種の基礎的な技能試験とN4レベルの日本語試験に合格すれば就労資格が取得でき、また技能実習2号(3年)を優良に修了すれば、無試験で特定技能にスライドできます(職種は制限されています)。

コミュニケーションレベルは技能実習以上、高度人材未満というとイメージしやすいかもしれませんね。もちろん能力は個人差があり、どの特定技能人材を雇用するかどうかは、高度人材を雇用する際と同様に面接など雇用企業側の物差しで判断することができます。

しかし、高度人材と異なる点としては、18歳以上で先にあげた基礎的な試験に合格さえすれば「特定技能」の要件を満たすため、日本人が期待するマナーやモラルなどの理解・認識のレベルはおそらく低いと想定されるため、技能実習生と同程度の生活面でのサポートが義務付けられています。しかも技能実習制度でマスコミにも報道されてきたようにかつて様々な領域で多くの問題があったために、事細かにサポートの内容が定められています。この事細かなサポート内容ですが、自社で対応できない場合は、登録支援機関と呼ばれる外部団体に委託することで、「特定技能」人材を雇用することができます。

技能実習制度と異なる点は、このサポート自体が自社で対応できれば、わざわざ外部機関(登録支援機関)に委託しなくても直接雇用できることにあります。つまり特定技能を直接雇用するには自社で法律で定められた支援体制を整えてくださいね。できない場合は外部機関(登録支援機関)に委託してくださいねということになります。

 

   ■支援内容の概略

 

では、この「特定技能」を雇用するために必須のサポート(支援)内容はどういったものになるかは、以下になります。

 

①事前ガイダンスの提供

②出入国時の送迎 

③適切な住居の確保に係る支援生活に必要な契約に係る支援

④生活オリエンテーションの実施 

⑤日本語学習の機会の提供 

⑥相談又は苦情への対応

⑦日本人との交流促進に係る支援

⑧外国人の責に帰すべき事由によらないで特定技能雇用契約を解除される場合の転職支援

⑨定期的な面談の実施行政機関への通報 

 

これら9つのサポート(支援)内容をすべて実施できる(または登録支援機関に委託する)ことで、はじめて「特定技能」人材を雇用することが可能となります。

 

一見すると一杯あってそれぞれややこしいそうだし、面倒くさそうだなと思われるかもしれません。ですがそれぞれ細かく見ていくと、実は雇用企業が自社で全て対応することが可能なんです。これらの全てのサポート(支援)内容を全て自社で対応することを「外国人雇用の内製化」と言います。

外部に委託しなくて済むこと(内製化)は、 多くのメリットがあります。

・外部委託費用が不必要。

・外国人材をサポートするノウハウが自社内で培える。

・外国人材に置かれた周辺状況を直接共有することができる。

 

もちろんデメリットもあります。

・時間、手間がかかる 

 

ただこれらのメリットデメリットは、あくまで雇用企業から見た一面になります。雇用された外国人材からはどう見えてるのでしょうか?なぜいつも一緒に働く人が教えてくれないんだろう?といった疑問を抱くかもしれないですね。

そもそもコミュニケーションの主体は雇用する企業にあると考えています。

彼ら彼女たちがコミュニケーションをとりたいのは、外部のサポート会社ではなく共に働く雇用企業の皆さんではないでしょうか? 

 

   ■政府の指針

 

この「外国人雇用の内製化」については、先日これをテーマにしたセミナーに参加してきました。このセミナーでは、 政府による「骨太の方針」から読み取れる指針について興味深い解釈がありましたので、共有させていただきます。

政府としては、条約難民や第三国定住難民を含め、在留資格を有する全ての外国人を孤立させることなく、社会を構成する一員として受け入れていくという視点に立ち、外国人が日本人と同様に公共サービスを享受し安心して生活することができる環境を全力で整備していく。その環境整備に当たっては、受け入れる側の日本人が、共生社会の実現について理解し協力するよう努めていくだけでなく、受け入れられる側の外国人もまた、共生の理念を理解し、日本の風土・文化を理解するよう努めていくことが重要であることも銘記されなければならない。在留外国人の増加が見込まれる中で、政府として、法務省の総合調整機能の下、引き続き外国人との共生社会の実現に必要な施策をスピード感を持って着実に進めていく。 (外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策   (令和3年度改訂)より抜粋)

 

ここで重要なのは、この「骨太の方針」の中でこれまで外国人材に対する記述がメインだったのが、はじめて「受け入れる側の日本人」について理解し協力するよう求める旨の内容が明記されていることです。

これまで、技能実習制度下において、劣悪な環境下での労働、法律外での労働など度重なる問題が取りあげられてきました。このようにニュースにまで取り上げられるほどの問題はごく一部の企業が引き起こしていたことかもしれませんが、多くの企業にはいまだに外国人材を特に技能実習生を「チームメイト」ではなく、「短期労働者」として扱うマインドが色濃く残っているのではないでしょうか?

先述したようにあくまでもコミュニケーションの主体は雇用主にあると考えます。

共に働く外国人材が困っている領域を外部の会社にサポートする、これではいつまでたっても問題を解決するノウハウは培うことができません。この「受け入れる側の日本人」が歩み寄る姿勢がなければ長期的な雇用はそもそも成立しないことを示唆していると読み取れます。 

これまで、技能実習制度下では3年あるいは5年経てば、母国に帰ってしまうので教育の場を与えたり、もっともっと成長して欲しいといった雇用側の教育意欲が芽生えにくい状況があったことは事実です。

ところが、業種・職種によっては、技能実習から特定技能へスライドして引き続き就労できるようになりました。長くともに働ける法整備が整いつつある中で、同時に雇用する側も長く働けるためのマインドの切り替え、体制づくりが必要となります。

 

   ■支援内容を読み解く

 

ではここで「特定技能」を雇用するために必須のサポート(支援)内容をひとつひとつ読み解いていきましょう。

 

①事前ガイダンスの提供

来日が伴う場合は、来日当日のスケジュール、および来日後のスケジュールを共有します。もちろん雇用契約など外国人材が不安に思っているところも説明のうえ、理解促進することが求められます。この際、自社で外国語対応できない場合は、通訳や翻訳機を使用することも可能なので、採用面接した担当者が同席すれば、外国人材も安心かと思います。

 

②出入国時の送迎

こちらは雇用契約が始まる入国時と帰国時のみの対応となりますので、プライベートで母国に帰る際の送迎は必要ありません。

 

③適切な住居の確保に係る支援生活に必要な契約に係る支援

特に住居の契約などは、外国人個人が契約する場合は、信用度がゼロに近いため、物件によっては上手いこと言って断られたりします。雇用企業が契約主になってあげることで、不要な時間・お金をかけずに入国後スムーズに生活がスタートできます。初めて対応する場合は大変かと思いますが、一度やってしまうとノウハウになるので、スケジューリングさえ注意すれば社内で対応は可能です。

 

④生活オリエンテーションの実施

日本で生活していくには、文化・習慣が異なる外国人にとっては、必要不可欠なオリエンテーションです。日本のルール、マナーをはじめ国や地方公共団体への届出などに関する情報提供や役所などでの1人では手続きが難しい手続きの同行や書類作成の補助などになります。

 

⑤日本語学習の機会の提供 

日本語教室や教材などの情報提供ととどめられています。制度上は情報提供まででも対応は可能となりますが、教材を与えるだけとなりがちなので注意が必要です。

 

⑥相談又は苦情への対応

職場や日常生活に関して相談・苦情について外国人が十分に理解することができる言語での対応や内容に応じたアドバイスや補助が必要となります。通訳を介すことも可能です。 日頃から相談や苦情がしやすい環境作り、関係値を築くことが最も大切です。 

 

⑦日本人との交流促進に係る支援

地域住民との交流の場に関する情報の提供や地域の自治会などの案内を行います。また参加の手続きの補助を行います。こちらも制度上は情報提供だけでも要件は満たしたことになりますが、こういった義務付けられていない項目を共有できる関係作りがコミュニケーション活性化の鍵となります。ともに参加し交友を深めることをお勧めします。 

 

⑧外国人の責に帰すべき事由によらないで特定技能雇用契約を解除される場合の転職支援

こちらは受け入れ側(雇用側)の都合により雇用契約を解除する場合、次の転職先を探す手伝いや推薦状の作成、有給休暇の付与や必要な行政手続きの情報提供となります。外国人材が自らの意思で退職する場合はこの対応は求められません。

 

⑨定期的な面談の実施行政機関への通報

支援責任者が外国人材及びその上司と3ヶ月に1回以上面談し労働環境に問題がないかなどチェックします。また当該行政機関へ通報をします。

 

このように、全く自社で対応なんて到底できないといった内容ではないと思います。特に、技能実習生から特定技能へ就労資格変更組となると、仕事の経験、会社の雰囲気、また日本での生活経験もそもそもあるため、サポート(支援)は比較的容易と考えます。

鍵となるのは、外国人材が悩み・相談をしやすい雇用元の環境作り、またそれを本人が直接できる日本語での会話力を養うこととなります。トラブルの8割はコミュニケーション不足が原因と言われます(日本人同士でも同じですよね)。日々職場であるいは職場以外でも会話できる関係値を築くためになにが必要で、なにが不必要なのかを改めて考察してみてはいかがでしょうか?

 


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