外国人と日本語で話す場合、案外気づかないうちに(もちろん悪気なく)相手を傷つけているあるいは、こちらの意図とは違う解釈になってしまって伝わっていることは多々あります。その原因を探っていきます。
今と昔の違い
かつてはよほど特別な人を除いては外国人は日本語ができないのが普通でした。それゆえアメリカ人なら英語、中国人なら中国語と、その人が一番使える言語を日本人の方が学んで、相手に合わせるのが一般的だったようです。
しかし時代は変わり、今では日本で働く外国人は約170万人を超えています。なんとその数、鹿児島県の人口を超えています。しかもコロナ禍を除くと、ほぼ毎年二桁の伸びで増加しています。
背景には、日本の人口減少に伴う生産労働人口の減少。つまり働き手を外国人材に頼らざるを得ない状況があります。また人手不足を補うひとつの手段になってしまった技能実習制度、日本で単純労働をすることができる労働資格「特定技能」の新設など、 外国人が日本で働く資格や制度が増えたことも一つの要因です。
ただし意味合いとしては、対等なビジネスパートナーとしての立ち位置ではなく、ほとんどが人手不足を補うための単なる労働者の位置づけになってしまっているのが現状ではないでしょうか。 圧倒的な主従関係があるため、日本人が外国人に合わせるのではなく、来日する外国人が一生懸命日本語を勉強して日本で働くというスタイルが今確立しています。
私たち日本人は今もこれからも外国人と日本語でやり取りをする機会をどんどん持つことになってきています。しかし、楽なはずの「外国人との日本語によるやり取り」が実は今様々な問題を生み出しています。
6つの質問
ここで皆さんに質問です。皆さんは次の六つの質問でどんな気持ちになったか考えてみてください。
①ゆっくり理解できるように話し「わかりました」と返事がきたので安心していたが、結局は全く理解していないと思うことが多々ある。
②「変な日本語」を延々と話す外国人と一緒にいると疲れる。
③日本語が話せると聞いてはいたが、初対面の外国人とは何を話していいのかわからない。
④話している意味はわかるのだが、ところどころ日本語の発音が下手な外国人の話は聞く気がしない。
⑤外国人による犯罪のニュースを聞くと、本音では生活や仕事で多くの外国人に囲まれるのは嫌だ、できれば日本には日本人さえいればいいと思う。
⑥せっかく日本に来ているのだから、もっと積極的に日本語で話しかけてきたらいいのにと思う。
いかがだったでしょうか?
常日頃外国人と接する機会がある人でも一つか二つは当てはまるのではないでしょうか?
逆の6つの質問
では逆に、ご自身が次のような体験をしたらどう思うか、また考えてみてください。
1海外旅行中、なんとか聞き取れた単語で全文を理解しようとするが結局わからず、聞き返してもまた聞き取れないので、とりあえず「イエス」と言ってその場をしのいだ。
2「変な英語」を自信を持って話す日本人と話すのは疲れる、とまわりの外国人が思っているみたいだ。
3初対面の外国人から、あなたに話しかけてこないオーラが伝わってきた。
4自分の英語は発音が日本式なので、内容があることを話しても相手にされない。
5外国に旅行や仕事で行ったら、できればこの国には日本人には来てほしくないと言われた。
6まだ自分から会話が続く自信がないので、できれば相手からいっぱい話しかけてほしい。
いかがだったでしょうか?こちらの1から6の質問は、どんな心境になったでしょうか?
お気づきの方もいるかもしれませんが、今の質問1から6は前の質問①から⑥と内容は同じで、単純に立場がひっくり返ったものです。外国人と日本語で話す場合、案外気づかないうちに(もちろん悪気なく)①から⑥のようなことをやってしまっていないでしょうか?
外国人本人との日頃の関わり方やコミュニケーションの頻度によっては、問題ない状況になることもありますが、ほとんどの日本人にとっては、①から⑥の質問はよくありがちなあるあるネタのひとつではないでしょうか?
ひとつの解決策
これは外国人に対しての日本語でのコミュニケーションの理解とスキル、つまり「歩み寄り」があれば障害をなくすことが可能です。
簡単に言うと、「外国人が日本語を学んでくれているのだから、私たちも日本語を話す時は相手にわかるように少し調節しよう」こう考えるだけでほとんどの障壁が障壁ではなくなります。
普通に考えると世界には英語で仕事ができる国の方が圧倒的に多いです。日本語よりも英語を話せるようになった方が、格段に仕事の領域・将来の選択肢は増えます。しかし、今もこれからも日本で働くことを夢見る外国人たちはわざわざ英語ではなく、日本語を勉強してこの国で頑張っていこうとしています。
それを意気に感じこちらも使い慣れた日本語や日頃の立ち振舞いをちょっと工夫して歩み寄れば、些細な行き違いから来る誤解や争いはずいぶん少なくなるはずです。
私たちが外国人に対して用いる日本語は、新しい親日家を一人誕生させるかもしれないし、新しい嫌日家を一人作るかもしれないのです。
これからの展望
これからが日本人、そして日本企業の腕の見せ所です。
日本は単に人口減少による労働者が減っているだけではありません。それに比例して日本人のお客さんも減っていくことに気がつかなければなりません。今共に働く外国人材を、労働者ではなくチームメイトとして受け入れることで、今後の企業の可能性を広げることができるのではないでしょうか?
彼ら彼女たちの考え方、想いを共有することができれば、雇用企業にとってはこの上なく頼もしいチームメイトになるでしょう。
特にアフターコロナは、技能実習だけでなく、特定技能の雇用が活性化することが期待されています。この両者は、高度人材のようなある程度の見識もなければ、日本語での会話能力も低いことが想定されるため、これまで以上の日本人側のコミュニケーションに対する意識が必要になってきます。同時に彼ら彼女たちの会話力を鍛えてあげなければなりません。雇用する企業側の歩み寄りが固い信頼関係の構築のキーポイントになると考えます。
「労働者ではなくチームメイト」このマインドがあれば、きっと外国人雇用はさらなる高みに進むと信じています。
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