待望の外国人材がいよいよ入社すると、日本人と同様に様々な手続きが発生します。
社会保険の加入です。
日本の社会保険は、「健康保険」「厚生年金保険」「労災保険」「雇用保険」の4つの保険があります。
健康保険・厚生年金保険
まず健康保険・厚生年金保険への加入が義務づけられている法人や個人事業主は「強制適用事業所」と言います。
強制適用事業所とは・・・
強制適用事業所は、次の(1)か(2)に該当する事業所(事務所を含む、以下同じ)で、法律により、
事業主や従業員の意思に関係なく、健康保険・厚生年金保険への加入が定められています。
(1)次の事業を行い常時5人以上の従業員を使用する事業所
a製造業 b土木建築業 c鉱業 d電気ガス事業 e運送業 f清掃業 g物品販売業 h金融保険業 i保管賃貸業 j媒介周旋業 k集金案内広告業 l教育研究調査業 m医療保健業 n通信報道業など
(2)国又は法人の事業所
常時、従業員を使用する国、地方公共団体又は法人の事業所
法人であれば、健康保険と厚生年金は加入しなければいけません。
個人事業主の場合、上記(1)などの事業を行ってなおかつ5人以上の従業員を使用する場合は加入義務があります。
ただし、厚生年金に関しては、「社会保障協定」を締結している国の外国人の場合は例外もあり、
また「脱退一時金」といった制度もあるので注意が必要です。
就労ビザ取得であれば、長期の雇用が前提となるので加入は義務になりますが、
「資格外活動」が許可されている留学生や家族滞在の外国人アルバイトの場合は以下のようになります。
アルバイトの場合
1週間の所定労働時間および1か月の所定労働日数が同じ事業所で
同様の業務に従事している一般社員の4分の3以上である方は被保険者とされます。
(ただし、資格外活動の外国人を週28時間以上働かせた場合、不法就労助長罪となりますのでご注意ください)
また、一般社員の所定労働時間および所定労働日数の4分の3未満であっても、
下記の5要件を全て満たす方は、被保険者になります。
- 週の所定労働時間が20時間以上あること
- 雇用期間が1年以上見込まれること
- 賃金の月額が8.8万円以上であること
- 学生でないこと
- 常時501人以上の企業(特定適用事業所)に勤めていること
社会保障協定
外国人が日本で働く場合、日本の社会保障制度への加入が必要となりますが、
母国での社会保障制度の保険料と日本での社会保障制度を二重に負担しなければならない可能性が出てきます。
また日本で年金を受け取るには、一定の期間年金に加入しなければならないため、
保険料の掛捨てになってしまうことがあります。
社会保障協定はこのような問題を解決するために特定の国と二国間で締結した協定となります。
・「保険料の二重負担」を防止するために加入するべき制度を二国間で調整する(二重加入の防止)
・保険料の掛捨てとならないために、日本の年金加入期間を協定で結んでいる国の年金制度に加入していた期間とみなして取り扱い、その国の年金を受給できるようにする(年金加入期間の通算)
この「保険料の二重負担の防止」と「年金加入期間の通算」は以下の国との間にのみ有効となっています(2018年8月時点)。
※イギリス、韓国、イタリア及び中国については「保険料の二重負担の防止」」のみとなります。
<協定発効済みの国>
ドイツ・イギリス・韓国・アメリカ・ベルギー・フランス・カナダ・オーストラリア・オランダ・チェコ・スペイン・アイルランド・ブラジル・スイス・ハンガリー・インド・ルクセンブルク・フィリピン
<署名済み未発効の国>
イタリア・スロバキア・中国
脱退一時金
日本国籍を有しない方が、国民年金、又は厚生年金保険の被保険者資格を喪失し、日本を出国した場合、
日本に住所を有しなくなった日から2年以内に脱退一時金を請求することができます。
脱退一時金支給要件
・厚生年金保険、共済組合などの加入期間の合計が6月以上あること
・日本国籍を有しない方であること
・老齢厚生年金などの年金の受給権を満たしていないこと
ただし、次のいづれかに該当した場合は脱退一時金を請求することができません。
・国民年金の被保険者となっているとき
・日本国内に住所を有するとき
・障害厚生年金などの年金を受けたことがあるとき
・最後に国民年金の資格を喪失した日から2年以上経過しているとき
雇用保険
外国人材でも日本人と同様に、加入条件を満たす場合は雇用保険への加入手続きが必要です。
雇用保険の加入条件
・31日以上引き続き雇用されることが見込まれる者であること
・1週間の所定労働時間が20時間以上であること
ただし、上記の加入条件を満たした場合でも雇用保険に加入できない場合もあります。
・全日制の教育機関に通う留学生
「留学」という在留資格では「資格外活動」許可をとれば、週に28時間まで働くことができ雇用保険の加入対象になりますが、
全日制の教育機関(昼間部)の学生は雇用保険の加入対象外となります。
通信教育、大学の夜間学部、定時制高校などの学生が雇用保険の加入条件を満たす場合は、加入手続きが必要となります。
また「ワーキングホリデー」はそもそも在留目的が「休暇」であって「就労」ではないので、加入できません。
雇用保険の対象となる場合には、日本人と同様に雇用保険被保険者資格取得届に、在留資格と在留期限、国籍を記入して
事業所の管轄のハローワークへ提出することになります。
また離職した場合にもハローワークへ報告が必要となります。
ここで注意しなければいけないのは、
雇用保険の対象とならない場合でも、管轄のハローワークへ外国人雇用状況届出書の提出が必要です。
届け出ない場合は、30万円以下の罰金を課せられる場合がありますので、ご注意ください。
労災保険
労災保険も国籍を問わず、日本で労働者として働く外国人にも適用されます。
就労することができる在留資格を持っている方はもちろん、
留学中にアルバイトをしていて事故にあった場合なども対象となります。
労災保険には、健康保険被保険者証や年金手帳のような個々人ごとの加入者証はありません。
外国人を雇う事業主は、国籍を問わず日本人と同様に社会保険への加入手続きが必要です。
同時に、毎月の給与から差し引かれる項目になっているため、
日本の社会保険制度について外国人材にしっかり理解・説明することが大切だと思います。
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