日本語トレーニング導入企業の様子

昨年2020年3月コロナ禍の中入国し、4月から当トレーニング教材を導入いただいており、約10ヶ月経過した会社に表敬訪問してきました。

この会社は、日本で数社しか加工できない大型クランクシャフト製造加工会社の八瀬鉄工所(https://www.yase.co.jp/)さんで、ベトナム人技能実習生2名が働いています。

日頃から日本語を頻繁に使用する介護職や接客業に比べると、コミュニケーション頻度が少ない製造業にも関わらず、毎日地道に発声トレーニングしているおかげで、特に聞き取る力が飛躍的に向上しています。

こちらがその時の映像になります。

よくある自己紹介を流暢な感じで話している動画がありますが、あのタイプは暗記したら表現できるので、あくまで何気ない話&インタビューっぽい様子の映像となります。(雇用社様からするとこの部分が一番気になる部分かと思います)

 

映像ではなかなか上手く伝わりづらいのですが(下手くそな撮影で申し訳ございません)、彼ら二人ともシャイな性格で自分からどんどん会話をするタイプではないのですが、毎日ベトナム語を聞いてすぐに日本語に翻訳する反射能力を鍛えているので、こちらが質問したことに対しての反応速度がとにかく早く聞いた内容を理解できています。 

実はこの映像ではカットしてしまっているのですが、彼らは会話の中で意味が分からない単語の意味を聞き返すことができるようになっています。

例えば、「この辺りでベトナムの食材を扱ってるお店はありますか?」と聞いたところ、「食材の意味が分かりません」と言ったように分からない単語を聞き返してきます。分からない言葉を聞き直してくれることは、雇用者側からすれば業務上最も期待する会話のやりとりではないかと思います。 

 

技能実習生や特定技能の日本語力のレベルであれば、意味が分からない単語の意味を聞き返すことがほぼ出来ません。ほとんどの方が「分かりました」と言っているのではないかと思います。

これは会話全体が聞き取れているからこそ、聞き返すことができます。あとは自分から話す機会をもっともっと増やせば、自分から発する会話能力は飛躍的に向上すると考えられます。 

まだN4すら持っていない彼らですが、私の長い日本語での質問も理解しており、本人たちは今度N4受けたいと言ってますが、ゆうにそのレベルを超えているのがわかると思います。

またいつも一緒に働いている日本人スタッフさんもの「日本人と会話してるのと何ら変わらない」(動画の最後のほう)と言うセリフはトレーニング教材を提供している側からすれば非常に嬉しい言葉です。

(この動画では、初めて会う私が、いきなりあれこれとインタビューするので彼らからするとかなり身構えた感じになってしまっていますが、普段はよく会話されているそうです)

 

ただ、ベトナム人技能実習生によくある傾向として、彼らは真面目でまっすぐ真摯に取り組む姿勢が強いがゆえに、与えられたものの範囲内で完了してしまうことが多く、勉強方法を自らで工夫して派生させて取り組むのは少し苦手かもしれません。 

学校に行きながら塾や家庭教師など様々な学習方法・機会を与えられ、知らず知らずのうちに効率よく勉強する工夫が身に付いている日本人とは大きく異なる点かもしれません。

そこで仕事をしながらでもすぐに実践できるプラスアルファの勉強方法をいくつかご紹介します。

 

  効果的な勉強方法

日本の企業では、日報や週報などの提出を義務付けているのがほとんどではないでしょうか?

また外国人を雇用している企業では、日本語の勉強の一環として日記などの提出を義務付けている会社もあると思います。

結論から言うと、いきなり日本語で最初から書いてもらうのは実はあまり効果的ではありません。

というのもいきなり日本語で書かせてしまうと、自分の知っている表現の範囲内でしか書くことができません。ほぼ毎日同じような内容になっているのではないでしょうか?

 

日記・日報の書き方

まずは母国語で彼ら自身が自由に表現したい内容を書かせることから始めることをおすすめします。それを日本語に翻訳します。

日本語に後から訳すのは翻訳ツールなど使っても構いませんが、大切なのは本人が本当に表現したい内容は日本語ではこんな表現になるんだということを自分自身で発見することが非常に大切です。

そこではじめて知った単語は、単純な暗記よりも印象が高く覚えやすくなります。また、知らなかった言い回しを覚えます。業務に関した内容であれば、業界の専門用語も覚えやすい状況となります。翻訳ツールはまだまだ信頼度が低いので、ここで日本人管理者と言い回しや単語の答え合わせをすれば、よりお互いが理解し合えるきっかけになると考えられます。 

 

スマホの設定

他には、私自身もやっているのですが、彼らのスマートフォンの表示言語を日本語に設定するなど日頃から学んでいる言語に接する機会を増やしていくのも効果的かもしれません。 

 

付箋の活用

また家の中あるいは自分の持っている備品などの全てに日本語で書いた付箋を貼り付けることも単語を覚えるには効果的です。家の中が付箋だらけになりますが、毎日目にすることで自然と頭の中に刷り込まれる機会を多くするのも効果的です。 

このように実は身近なところに自分自身をスキルアップさせる機会・材料が潜んでおり、日々行なっているルーティーンに少し工夫をするだけで勉強教材に早変わりさせることが可能ですので、小さな工夫を彼ら彼女たちに伝えてあげるのもいいかもしれません。

 

 

  トレーニング教材の活用方法
<考え方>

当トレーニングは、HOMEWORK(音声トレーニング教材)での毎日の発声トレーニングと専属の日本語コーチによるフォローアップレッスンとで構成されています。ここではHOMEWORKの活用方法を簡単に説明いたします。

作文能力と会話能力はそもそも違う能力です。違う能力だからそれぞれの鍛え方も異なります。

作文能力はメールを送ったり手紙を読んだり個人で時間をいくらでもかけて良いけれども正確性が求められる能力です。対して会話能力はその場での反射能力すなわちスピードが求められます。この反射能力やスピードは継続したトレーニングでないと培うことが難しいです。つまりHOMEWORKは筋トレのようなものです。 腹筋でも腕立てでも最初から完璧な形でたくさんの量をこなせる人はいません。ある程度の量をこなすうちに、 だんだんとコツをつかんで、出来るようになっていきます。

地道な努力は裏切りません!失敗を恐れずに、コツコツと取り組んでいただくトレーニングとなります。

 

<HOMEWORK>

HOMEWORKは以下の例文のように同じ意味を持つベトナム語と日本語の組み合わせで構成されています。

 

例) ベトナム語:Quả táo này rất ngon.

↓ (無音時間)

日本語:このリンゴは美味しいです。

 

ベトナム語と日本語の間に無音の時間があり、この間に口を動かしてご自身で思いついた日本語を言っていただくトレーニングです。ただしこの無音の時間がネイティブの日本人が話す間隔しかないため、頭で文法を考えている時間を与えません。

ベトナム語の後に日本語が出てこなくても、オーディオを停止せず、そのまま進んでいただきます。 最初から全部完璧に言おうとせず、「美味しい」や「このリンゴ」だけでも大丈夫ですので何か言う努力をしていただきます。同じセンテンスが何度もランダムに再生されて、トレーニングすることで脳に日本語表現が刻み込まれます。

<技能実習生のトレーニングの様子>

 

  • 同じ意味を待つベトナム語と正しい日本語表現の組み合わせで、耳と口でトレーニング
  • ベトナム語の後にも、日本語の後にも日本語を口に出すことで、瞬発力をつける
  • ネイティブの正しい発音を聞き、真似することにより、正しい発音を身につける

 

つまり頭で考えるのではなく、瞬発的に表現することができるようになる。何度もトレーニングをすることによって、身体で覚えてしまうことを主眼にしています。

次に、構成に関してです。 HOMEWORKのDAY-1では、「ベトナム語―日本語―日本語」 の順番で同じセンテンスの日本語が2回ずつ再生されます。ベトナム語の後の無音時間内に頭に浮かんだ日本語を話し(=通訳)、日本語が聞こえてきたところで、聞こえてきた音を日本語でリピートしてください。(=シャドーイング)HOMEWORKでは基本的に、 約50のセンテンスを5日間かけて練習していただきます。何度も何度もリピートし、さらに出てくる順番で覚えられないようにランダムに再生されるようになっています。毎回トライするたびにテスト感覚でトレーニングすることが可能ですので、絶えず耳と口を鍛えることを狙いとしています。

 

<フォローアップレッスン>

会話力を養成するには、「勉強」だけでは永遠に向上しません。自分自身が発声する努力を継続的に行わなければなりません。 余程の才能に恵まれていない限り、外国語でどんどん人と会話し、たくさん失敗するのが近道です。 

いきなり流暢な日本語で会話ができることはまずありえませんので、最初は流暢じゃなくても言いたい事が頭に浮かんでくフレーズ、言い回しを体で覚えこんでしまうぐらいの量の発声トレーニングが必要です。 

特に技能実習生や、特定技能などを目指す外国人材は、日本人が大好きで会話力が伸びない日本式の「勉強」から入ってくるので「文法」や「単語」の勉強を好む傾向があります。新しい言い回しや単語を暗記するので、やった感(充実感)がありますが、実際の会話となると日頃から発声トレーニングをしていないため(言い慣れていないため)まず言葉が出てきません。あるいは少し話せるが何を言っているかわからないといった状況に陥り、結果として「聞く(意味は理解していない)」だけの状況となり、自分からはあまり発声できないことに陥りがちです。

このフォローアップレッスンでは、会話力の向上はもちろんのこと、個人個人の行き詰っているところ悩みどころに合わせたカスタマイズされたマンツーマンレッスンとなります。上記のように勉強至上主義の方でも、実は文法のことはよく理解できていなかったり、そもそも単語量が少なかったりしますので、悩みを紐解くことで効率よく会話力アップに結びつけるオリジナルのレッスンを展開しています。

ここでは、だんまりは禁物です。とにかく話す。間違える。失敗していただきます。まずは日本語で会話することの抵抗をなくします。 日本語力の低い技能実習生や特定技能だけでなく、N 2保持者などのある程度の基礎力がついている方でも変な日本語になっているケースがほとんどですが、専属の日本語コーチによるマンツーマンのレッスンなので、プライドの高い人でも自分のできていないところを誰かに知られることなく躊躇なく克服することが可能です。 

さらに人によっては毎週宿題が出されますので、ホームワークのトレーニングだけでなく やらなければいけないことがてんこ盛りになります。 

 

<日本人の関わり方>

世界的にみても日本人が最も遅れを取っている外国語を習得することは、もちろん日本で働く外国人にとってもかなり大変なことです。 

日本人でもかつては英語が話せた方も日頃から英語に携わっていなければなかなか会話の感覚が出てこないようです。そういった外国語を話すのに長けた人でも勘が鈍らないために毎日英会話に取り組んでる方も多いようです。

ましてや日本語が話せない人が毎日日本語で会話のトレーニングをしなければ上達しないのは言うまでもありません。 

今日本で働く技能実習生と、まだ数は少ないですが特定技能の外国人材は日頃から日本語で会話ができる絶好のチャンスにいます。これまで彼らを雇用する企業の環境では単なる作業要員として扱い、会話できるような鍛える環境に置いてこなかったのは大きな損失です。

今後日本の人口はどんどん減少していきます。彼らを短期の労働者として扱うのではなく今後の事業の継承者あるいはビジネスパートナーとして育てる体制が必要になってきます。

 

この体制づくりは実は日頃のコミュニケーションを増やすことが大きな鍵となります。 

一番最初のトレーニング導入企業の様子の映像に戻りますが、この技能実習生を受け入れている企業様の暖かい受け入れ姿勢が見て取れると思います。当トレーニング教材を導入するにあたり、導入企業様には一点だけお願いしている事項がございます。こちらの企業様にも同様で、実は「毎日の仕事終わりに5分でもいいので彼らのトレーニングの成果を共有してあげてほしい」ということをお願い致しました。

最初の1ヶ月から2ヶ月の間は社長さんが仕事終わりに毎日寄り添って彼らのトレーニングを継続してチェックしてくれたのが礎となっているのでしょうか。この毎日寄り添って彼らのアウトプットの場を共有することが、実は知らない間に信頼関係を育んでいるのです。

片言の日本語で見知らぬ地に初めてやってきた彼らからすると「自分のことを気にかけてくれてるんだ」という安心感を形成し、日本人側からすると「どうやったら彼らとコミュニケーションがとれるのか?」「何から始めたらいいのかわからない」といった不安も、「日本語での会話トレーニング」を仕事以外の共有ごとにすることで、 無意識のうちに彼らとコミュニケーションがとれるマインドに変化しています。 

 

・彼らの毎日の発声トレーニング

・個々の行き詰まっている悩みどころに合わせた専属コーチによるマンツーマンレッスン

・それを支える雇用企業のフォローアップ

 

この3つが密接に絡みあって効果を高めています。社長さんの彼らに成長して欲しい気持ちがひしひしと伝わり(動画の最後のほう)、また共に働く日本人スタッフも常日頃から積極的にコミュニケーションをとられている背景が見えたのではないでしょうか。

今度N4取得したいとのことでしたが、(普通に会話できる人には資格の有無は必要ないので)あまり意味のない資格取得に先行する世間の風潮はなんとかならないものかと思う次第です。

彼らの能力はすでにN4超えてますが、まだまだ伸び代あるので今後の成長が楽しみです!

 

こちらは、日本語教育を導入しようと検討する際、考え方や目的に対する教育基準の選定方法などをまとめたe-bookになります。参考にしてみてください。

 


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